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海外FXのトレーダーが個人事業主になるのはあり?税金・確定申告時のメリットについて

「海外FXで個人事業主になれば税金がお得になるかも!」

海外FXの利益が安定したら、個人事業主になろうと考えている人はいませんか?

しかし、海外FXは事業として認められる可能性が低いため、個人事業主になっても大きなメリットはありません。

そこで本記事では、海外FXで個人事業主になった場合の税金と確定申告について解説します。

海外FXで個人事業主になるメリットとは|法人とどっちがお得?

一般的に、個人事業主として青色申告すると各種所得控除が受けられるため、所得税の計算では有利とされています。

しかし、海外FXは青色申告が認められない可能性があるため、個人事業主になっても所得控除のメリットが受けられないかもしれません。

さっそく、海外FXで個人事業主になるメリットと、法人化するのではどちらがお得かを解説します。

個人事業主になるメリットは少ないかも…

海外FXの利益は青色申告の対象外になる可能性が高いため、個人事業主になるメリットは少ないといえます。

青色申告とは確定申告の種類のひとつで、節税効果が高いなどのメリットがあります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
  • 損失を3年間繰り越せるため、翌年以降の利益と相殺できる

しかし、海外FXは事業として認められず利益は雑所得扱いとなるため、個人事業主は青色申告できない可能性が高いのが現状です。

過去に裁判があったが事業所得として認められなかった

過去には、FXの利益が事業所得と雑所得のどちらに該当するかを争う裁判がおこなわれています。

請求人は、FXの利益が事業所得に該当するとして、損失と給与所得を損益通算する申告をしていました。

しかし、FXの利益は雑所得に区分され損益通算が認められず、更生処分と過少申告加算税の賦課決定処分がなされたのに対して不服を申し立てたのがきっかけです。

裁判でも変わらずFXの利益は事業所得として認められず、利益は雑所得に該当すると判断され、FXは損益通算の対象外との判決が出ました。

経費は個人事業主でなくても計上できる

経費は会社員やフリーターでも計上できるため、個人事業主になる必要はありません。

海外FXの経費とは海外FXで利益を得るためにかかったコストを指しており、発生した経費は利益から控除できます。

経費を控除して利益が少なくなれば、所得税を抑えられるので節税対策として有効です。

つまり、雑所得と事業所得のどちらでも経費の計上が可能なため、経費の観点では個人事業主になるメリットはありません。

また個人事業主になると確定申告が複雑になる可能性も

すでにほかの事業でも個人事業主として活動している人が海外FXでも個人事業主になると、帳簿の作成などが複雑になる可能性があります。

個人事業主が確定申告する場合、所得ごとに収支などの帳簿を作成する必要があります。

そのため、事業所得と海外FXの雑所得を確定申告する際には、事業所得と雑所得の帳簿をわけて作成しなければいけません。

通常の利益と経費は、所得ごとにわけて管理すれば帳簿の作成は問題ありませんが、共通の経費が発生した際にどちらにいくら計上するかを計算しなければいけません。

例えば事務所の家賃や通信費などの共通経費は、一定の計算をもとに按分しなければいけないため計算が複雑になります。

所得の種類によって損益の計算方法が異なるため、過少申告など誤った申告をしないように気をつけましょう。

損失の繰越控除や事業所得との合算もできない

海外FXなどの雑所得は損失を翌年以降に繰り越せません。

また、種類が異なる所得を合算して課税所得を計算することも認められていません。

海外FXで損失が発生した場合

1年目:50万円の損失 2年目:100万円の利益
海外FXは損失の繰越が認められていないため、2年目の100万円に対して所得税が計算されます。

海外FXと事業所得の一方で損失が発生した場合

海外FX:50万円の損失 事業所得:100万円の利益
所得の種類が異なっており損益通算できないため、事業所得の100万円に対して所得税が計算されます。

海外FXは個人事業主になっても損失の繰越や事業所得との損益通算はできないため、繰り返しになりますが海外FXで個人事業主になるメリットは少ないといえます。

個人事業主が節税するなら「ほかの雑所得と合算」しよう

海外FXの節税対策として、同年であれば海外FX以外のほかの雑所得と損益を合算して課税所得を計算することが挙げられます。

例えばほかの海外FX業者での損益や副業収入など、同年に発生したほかの雑所得があれば合算して納める税金を計算します。

海外FXと副業収入の損益を通算する場合

海外FX1:150万円の利益 海外FX2:50万円の損失 副業収入:50万円の損失
同じ雑所得であれば損益を合算して課税所得を計算するため、差額50万円に対して所得税が計算されます。

雑所得に該当しない不動産所得や給与所得などは、海外FXの損益と合算できません。

経費の計上も忘れずに

海外FXのために利用したセミナー代や通信費などは、経費として利益から控除できます。

一般的に、以下の費用は経費の対象になるとされています。

  • セミナー参加費や交通費
  • 書籍やテキスト代
  • Wi-Fiなどの通信費
  • パソコン購入費用
  • 備品代

海外FXのために利用した費用のみが確定申告の対象となるので、私的な消耗品やプライベートの飲食代は経費として認められません。

また、経費に計上する費用の領収書やレシート、振り込み記録などはきちんと管理し、経費として支払ったことがわかるようにしましょう。

社会保険料控除や配偶者控除など控除を使うとさらに節税ができる

所得税を節税する方法として、社会保険料控除や配偶者控除を利用するのがおすすめです。

  • 配偶者控除
    配偶者の課税所得が48万円(給与収入だけなら103万円)以内なら、所得から38万円控除できる。
  • 配偶者特別控除
    配偶者の課税所得が38万超え〜133万円以下(給与収入だけなら103万円超え〜201万6千円未満)であれば、配偶者の課税所得額によって一定額の控除が受けられる。
  • 社会保険料控除
    自身や生計を一にする配偶者、親族の社会保険料を支払った場合、支払い金額の控除が受けられる。

青色申告を使うなら法人化をしよう

個人事業主は、海外FXを事業にすることが認められていません。しかし、法人化すれば海外FXを事業にできるため、さまざまな税制メリットが受けられます。

  • 所得が増えると所得税より法人税の方が税率が低くなる
  • 海外FX以外のほかの事業の所得と損益通算できる
  • 発生した損失を最大10年繰り越せる
  • 役員報酬や住居費用を経費に計上できる
  • 含み損を計上できる

ただし、法人化するには初期費用以外に法人税や税理士費用などのランニングコストが発生するため、法人化するタイミングはよく検討しましょう。

認められる経費の幅が広がる

役員報酬や住居費以外にも、法人名義で契約しているものの多くを経費として計上できます。

  • 法人名義の車、ガソリン代
  • 勤務している社員への給与
  • 自身や社員にかけている生命保険
  • 法人名義の通信費
  • 法人名義の家賃・交通費
  • 法人名義で購入したパソコン

ただし、法人名義であればすべて経費に計上できるわけではなく、海外FXに関連する経費のみが対象となります。

個人事業主の場合、通信費やパソコンは海外FXをしている時間に相当する費用しか認められていませんでしたが、法人名義であれば全額経費に計上可能です。

法人化して法人税の安い国に移住するのもあり

各種税金を抑える方法として、法人化しタックスヘイブンと呼ばれる国に移住する方法もあります。

タックスヘイブンとは法人税や所得税、住民税などの税率が低い国をいいます。

日本で事業し生活する場合、多くの税金を納めなければいけません。各種税率が低いシンガポールと比較してみます。

日本 シンガポール
法人税 約30% 約17%
所得税 最大約45% 最大約22%
住民税 約10% 0%

ただし、各種税率が適用されるには一定の要件を満たさなければいけません。

タックスヘイブンで法人設立はもちろん、タックスヘイブンでの居住年数や株式保有割などが定められているため、対象にならない場合は日本の税制に則り税金を納める必要があります。

注意!キャッシュバックやポイントなども雑所得扱いとなる

海外FXのキャンペーン、お買い物サイトなどのキャッシュバックやポイント付与は、雑所得扱いとなります。

ポイ活で得たポイントも、労務の対価として雑所得に区分されるため気をつけなければいけません。

海外FXの雑所得を確定申告する際にはキャッシュバックやポイントなど、ほかの雑所得も合算するのを忘れないようにしましょう。

ただし口座開設ボーナスや入金ボーナスは一時所得扱い

一般的に口座開設ボーナスや入金ボーナスは一時所得としてみなされ、特別控除50万円が受けられます。

そのため、ほかの一時所得を含めた合計額が50万円以下であれば課税対象にはなりません。

一時所得の計算式

・総一時所得 – 総経費特別控除額(50万円)= 一時所得の金額

ただし、実際に課税対象になるのは、一時所得の金額の2分の1です。

また、一時所得は総合課税に含まれるため、一時所得の2分の1の金額を給与所得などに合算して税金を計算します。

海外FXで個人事業主になるのはあり?税金に関するよくある質問

海外FXで個人事業主になった場合の税金に関して、よくある質問3つに回答します。

  1. どれくらいの利益なら法人化すべき?
  2. 国内FXとの損益通算や損失繰越はできる?
  3. 出金しなくても税金はかかる?

気になる項目をチェックしておきましょう。

Q1. どれくらいの利益なら法人化すべき?

税金の観点で法人化するタイミングを考えると、年間所得が毎年700万円を超えたあたりからが検討対象でしょう。

年間所得700万円であれば、個人も法人も税率は約33%と同程度ですが、法人は経費などの多くの税制メリットを受けているため全体では法人の方がお得になるといえます。

ただし、法人化することで法人税の支払い、税理士や社労士の委託費用などのランニングコストが発生します。

実際に法人化をする前には税理士などに相談し、法人化によって発生する費用を洗い出しておきましょう。

Q2. 国内FXとの損益通算や損失繰越はできる?

個人事業主は、海外FXと国内FXの損益通算はできません。また、海外FXの損失繰越は認められていません。

ただし、法人化すると海外FX以外の事業との損益通算、ならびに発生した損失の繰り越し(10年間)が認められます。

個人事業主は所得税の計算を所得区分ごとにおこないます。そのため、所得の区分が異なる海外FXと国内FXは損益通算の対象外です。

  • 海外FX:総合課税
  • 国内FX:申告分離課税

総合課税とは各種所得金額を合計して所得税を計算し、分離課税はほかの所得金額と合計せずに所得税を計算する制度です。

海外FXと国内FXは損益通算できない

海外FX:30万円の損失 国内FX:100万円の利益

海外FXと国内FXは損益通算できないため、国内FXの利益100万に対して所得税が計算されます。

海外FXの損失は同じ年に発生した雑所得と相殺し、課税所得を計算することが認められていますが、個人事業主は翌年以降に損失を繰り越すことはできません。

海外FXで損失が発生した場合

1年目:30万円の損失 2年目:100万円の利益

海外FXは損失の繰越が認められていないため、2年目の100万円に対して所得税が計算されます。

個人事業主ではなく海外FXで法人化すれば、多くの税制メリットを受けられます。

Q3. 出金しなくても税金はかかる?

海外FXの利益を出金していなくても、確定している損益は課税の対象になります。

海外FXはポジションが決済され、確定している損益の合計額が確定申告の課税対象となります。

決済せずに、為替の変動や損益が変動しているポジションは課税の対象になりません

ただし、売買する通貨間の金利差を調整する際に受け取れるスワップポイントは、受け取って口座に反映したときに課税対象となります。

まとめ

このページでは、海外FXで個人事業主になった場合のメリットを解説しました。

最後に重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 海外FXは個人事業として認められず、青色申告の対象外になる可能性が高い
  • 経費は個人事業主だけでなく、会社員やフリーターでも計上できる
  • 事業所得と雑所得の2種類ある個人事業主は、帳簿作成が複雑になりやすい
  • 個人事業主は海外FXの損失繰越やほかの所得との損益通算はできない
  • 海外FXと副業収入などの雑所得同士は損益通算できる
  • 法人は社有車や住居費を経費にできる

個人事業主になっても海外FXは事業として認められない可能性が高いため、税制メリットは多くありません。

反対に個人事業主になることで、確定申告時に提出帳簿の作成が複雑になるため手間が増えるでしょう。

法人化であれば、経費にできる項目が増え、損益通算や損失繰越が認められるので大きな税制メリットを受けられます