海外FXの信託保全を調べると、たいてい「信託保全か分別管理か」の2択で業者が並べられています。ですが、その分け方だけでは自分のお金が戻ってくるかどうかは判断できません。「補償あり」と書かれていても、その補償が業者が倒産したときに効くとは限らないからです。
この記事では、海外FX14社の公式サイト・保険証書・利用規約の原文を直接確認し、資金の管理方法と「補償」の中身を確認日つきで整理しました。あわせて、国内FXの信託保全がどの条文で義務づけられているのか、実際に破綻した業者では何が起きたのかまで、一次情報をもとに示します。
結論|海外FXの信託保全の要点(2026年9月時点)
- 信託保全と分別管理の違いは「誰が持っているか」。信託は業者の外にいる信託銀行が預かるため、業者が倒産しても債権者が手を出せない。分別管理は業者自身が帳簿を分けて持っているだけで、外に出ていない
- 14社を調べて、「信託」という言葉で説明していたのは3社だった(Tradeview・AXIORY)。ただし2社とも受託先の銀行名も上限額も公表していない。他の多くは「分別管理」だった
- 公式サイトの説明と、利用規約の条項が食い違っている業者があった。BigBossは公式ガイドラインで「お客様の運用資金と同額の資金を分別保管します」と書いている一方、利用規約では顧客資金を担保として保持し、通知なく口座間で移動できると定めている
- 「補償あり」には4つの種類があり、中身がまったく違う。①法定の補償基金 ②賠償責任保険 ③顧客の損害をカバーする保険 ④紛争解決機関の基金。②と④は業者の倒産では機能しない
- 保険証書を公開していたのは3社。HFMの日本語ページは「500万ユーロ」だが証書は「USD 5,000,000」で、専門家賠償責任保険・弁護費用込みの総額。FXGTの証書もEUR1,000,000・費用込みの総額・関連会社と共有で、「所持する人に何の権利も与えない」と明記されている
- 金融委員会(The Financial Commission)の補償基金は、規約で「業者の顧客全体に影響する破綻」を対象外にしている。倒産時に使える制度ではない
- FSCS(最大85,000ポンド)とICF(90%かつ最大20,000ユーロ)は、日本から使う口座では基本的に対象にならない。日本居住者が契約するのは多くの場合セーシェル・モーリシャス・バヌアツなどの法人で、英国FCAやキプロスCySECの規制法人ではないため。グループ内にCySEC・ASIC法人を持つ業者もあるが、どの法人と契約するかで結論が変わる
- 破綻は実際に起きている。GEMFOREX(Gemtrade LLC)は2023年5月31日にサービスを停止して支払不能となり、2026年2月時点でもまだ清算手続の途中だった
- 国内FXの信託保全は法律で義務。店頭FXは金融商品取引法43条の3第1項で区分管理が義務づけられ、その信託の要件は内閣府令143条の2「顧客区分管理信託」に定められている
※本記事は、MoneyCharger編集部がコンテンツ制作ポリシーに基づき作成しています。各社の資金管理方法・補償制度は、公式サイト・公式FAQ・利用規約・保険証書の原文(英語版を含む)を2026年9月に確認したものです(出典URLと確認日は本文の表に明記)。資金管理の体制や補償の条件は業者の判断で変更される場合があります。口座開設の前に、必ずご自身で最新の表示をご確認ください。確認できなかった項目は「確認できず」と記載し、確認できていないことを「提供していない」とは書いていません。海外FX業者は日本の金融庁に登録がなく、金融庁と消費者庁は無登録業者との取引について注意喚起しています。
海外FXがはじめての方は、あわせて海外FX初心者完全ガイドもご覧ください。
信託保全とは|預けたお金が「誰の名義で」どこにあるか
信託保全とは、顧客から預かったお金を、FX会社の外にある信託銀行に預けて管理する仕組みのことです。ポイントは「分けているかどうか」ではなく、会社の外に出ているかどうかです。ここが分別管理との決定的な違いになります。

| 比べる点 | 信託保全 | 分別管理 |
|---|---|---|
| お金を持っている人 | 信託銀行(FX会社の外) | FX会社自身 |
| FX会社が倒産したら | 信託財産なので会社の債権者は手を出せない | 会社の財産と一緒に扱われるおそれがある |
| 返還の手続き | あらかじめ決められた手順で返還される | 破産手続の中で清算される |
| 導入のコスト | 信託報酬などが継続的にかかる | 相対的に低い |
| 国内FX | 法律で義務(金融商品取引法43条の3第1項ほか) | — |
| 海外FX | 義務ではない(各社の任意) | こちらが多数 |
「外に出ている」ことが効くのは、倒産したときだけ
普段どおり取引して出金できているあいだは、信託保全でも分別管理でも違いは出ません。差が出るのはFX会社が倒産したときの1回だけです。
信託されているお金は、法律上信託財産として扱われます。FX会社の財産ではないため、会社が倒産してもその会社にお金を貸していた銀行や取引先が差し押さえることはできません。一方、分別管理は会社が自分の口座の中で「これは顧客のお金」と帳簿上分けて持っている状態です。帳簿は分かれていても、お金そのものは会社の中にあります。
つまり分別管理は、会社がルールどおりに運用していることが前提の仕組みです。実際に破綻した業者で何が起きたのかは、実際に破綻した業者はどうなったかで取得した一次情報をもとに扱います。
元本が保証される仕組みではない
信託保全は、取引で出した損失を埋めてくれる制度ではありません。守られるのは「そのときの口座残高」であって、為替が動いて損失が出た分は対象外です。ロスカットされて残高が減ったなら、減ったあとの金額が保全の対象になります。
「信託保全があるから損をしない」という読み替えは成り立ちません。信託保全が答えているのは「会社が潰れたときに、そのとき残っていたお金が返ってくるか」という問いだけです。
国内FXの信託保全は法律で決まっている|条文で読む
国内FXの信託保全は、業者のサービスではなく法律上の義務です。どの条文が何を義務づけているのかまで見ておくと、海外FXとの差がはっきりします。
義務の根拠は金融商品取引法43条の3第1項
店頭FX(店頭デリバティブ取引)について、顧客から預かった証拠金を自己の財産と分けて管理することを定めているのが金融商品取引法43条の3第1項です。
金融商品取引業者等は、その行うデリバティブ取引等(…)に関し、第百十九条の規定により顧客から預託を受けた金銭又は有価証券その他の保証金又は有価証券については、内閣府令で定めるところにより、自己の固有財産と区分して管理しなければならない。
出典:e-Gov法令検索 金融商品取引法 第43条の3第1項(2026年9月確認)
条文は「内閣府令で定めるところにより」と書いています。具体的な方法は法律本体ではなく、金融商品取引業等に関する内閣府令に落とされているということです。
「顧客区分管理信託」と「顧客分別金信託」は別物
内閣府令には名前のよく似た2つの信託が出てきます。検索でも「違いが分からない」という声が多いところです。対象になる取引が違います。
| 名称 | 根拠 | 対象になる取引 | 関係する制度 |
|---|---|---|---|
| 顧客区分管理信託 | 内閣府令143条の2 | 通貨関連デリバティブ取引等(=店頭FX)・暗号資産等関連デリバティブ取引等 | — |
| 顧客分別金信託 | 内閣府令141条(法43条の2第2項) | 有価証券関連の取引 | 投資者保護基金(加入・非加入で要件が分かれる) |
| 商品顧客区分管理信託 | 内閣府令142条の5 | 商品関連市場デリバティブ取引 | — |
顧客区分管理信託の要件を定める条文には、誰を受託者にするかと誰を受益者にするかが書かれています。
金融商品取引業者等を委託者とし、信託会社又は信託業務を営む金融機関を受託者とし、かつ、当該金融商品取引業者等の行う通貨関連デリバティブ取引等(…)に係る顧客を元本の受益者とするものであること。
受益者代理人を選任し、…
出典:金融商品取引業等に関する内閣府令 第143条の2(2026年9月確認)
お金を出すのはFX会社、預かるのは信託会社または信託業務を営む金融機関、そして元本を受け取る権利を持つのは顧客という関係です。条文には受益者代理人を選ぶことも書かれています。会社が倒産して自分で手続きできない状況でも、顧客の代理として返還の手続きを進める人をあらかじめ決めておくという仕組みです。
※この受益者代理人の仕組みは、日本の内閣府令が定める国内FXの制度です。海外FX業者にこの制度が適用されるわけではありません。海外FXの説明で「信託銀行から受益者代理人を通じて返還される」と書かれていることがありますが、それは国内FXの仕組みの説明です。
海外FXには、この義務がない
ここまでの条文は日本の金融商品取引業者に対する規定です。海外FX業者は日本の金融庁に登録していないため、この義務の対象外になります。信託保全を導入するかどうかは各社の判断で、導入していない業者のほうが多いのが実態です。
国内FXと海外FXの制度面の違いは海外FXと国内FXの違いでも扱っています。
海外FX14社の資金管理と補償を横断比較
14社の公式サイトを確認したところ、「信託」という言葉で説明していたのは3社でした。他の多くは「分別管理」で、言葉の使い分けにも差があります。「補償」の欄は、金額だけでなくその原資が何かまで書いています。
この比較の条件
- 対象|現行の海外FX業者14社(旧版で掲載していた8社+主要6社)に加え、破綻事例として GEMFOREX 1社を参考掲載。「14社中◯社」という比率の分母は現行14社です
- 確認先|各社の公式サイト・公式FAQ・利用規約・保険証書のみ。第三者サイトの記述は使っていません
- 確認日|2026年9月18日〜24日(業者ごとの出典URLは表の右端)
- 表記|公式が書いている通貨・単位のまま掲載し、当編集部での換算はしていません
- 確認できなかった項目は「確認できず」と書いています。確認できていないことを「提供していない」とは書いていません
| 業者 | 資金の管理方法 | 「補償」の有無と原資の種類 | 規制・登録 | 出典(2026年9月確認) |
|---|---|---|---|---|
![]() Tradeview | 信託(銀行に信託+独立会計機関GC PARTNERSが分別管理) | 記載を確認できず | ケイマン諸島金融庁(CIMA)License #585163 | 公式トップページ(会社概要セクション) |
![]() XMTrading | 分別管理(優良金融機関で管理)+外部監査(毎年、財務諸表の監査を実施と明記) | 補償制度の記載を確認できず | セーシェルFSA SD010(Tradexfin)/モーリシャスFSC GB20025835(Fintrade) | 公式「選ばれる理由」 |
![]() HFM | 分別管理 | あり/賠償責任保険。証書はUSD 5,000,000の専門家賠償責任保険(弁護費用込みの総額) | 被保険者はHF MARKETS (SV) LTD(セントビンセント) | 公式「資金の安全性」+保険証書PDF |
![]() FXGT | 分別管理(優良銀行に預託) | あり/民事賠償責任保険(ロイズ)。証書はEUR1,000,000・費用込みの総額・関連会社と共有 | セーシェルSFSA SD019/南アフリカFSCA 48896/バヌアツVFSC 700601 | 公式「資金の安全性」 |
![]() XS.com | 分別管理(「信頼性の高い国際金融機関の分離口座」) | あり/民事賠償責任保険(ロイズ)。1万USドルを超える損害や破産時に最大500万USドルと自称 | ASIC 374409/CySEC 412/22/セーシェルFSA SD089/FSCA 53199 ほか。公式は「投資家補償制度に関する規制条項は、お客様が関与するXS事業体によって異なります」と明記 | 公式「安全性」 |
![]() TitanFX | 分別管理の明示あり(「自己資金とは完全に分離」「信頼できる銀行機関の別の銀行口座に保管」)+外部監査(DFK Collins Pty Ltd) | あり/賠償責任保険+紛争解決機関の基金。専門家賠償責任保険USD500,000・役員賠償責任保険USD2,500,000・金融委員会€20,000(破綻時の顧客全体は対象外) | バヌアツVFSC Titan FX Limited(40313)/BVIFSC Atlantic Markets Limited(SIBA/L/23/1124)/モーリシャスFSC Titan Markets(GB20026097) | 公式「規制」 |
![]() Vantage | 分別管理 | あり/顧客の損害を対象と明記した保険(Excess of Loss・ロイズのARCH 2012が引受)。1請求者あたり最大USD1,000,000・総額USD50,000,000。ただし1請求者あたり免責USD20,000・破綻時限定・取引損失は対象外・保険会社への直接請求権なし | 公式が「保護の内容は口座を保有する事業体と顧客契約によって変わる」と明記 | 公式「Fund Insurance」 |
![]() MiltonMarkets | 分別管理(明示あり)+外部監査(定期的な監査の対象と明記) | 記載を確認できず | FSA(姉妹会社のライセンス。契約主体はセントルシア登記) | 公式「顧客保護制度」 |
![]() MyfxMarkets | 分別管理+外部監査(明示あり) | 記載を確認できず | セーシェルFSA SD202(MYFX GROUP LIMITED) | 公式「選ばれる理由」 |
![]() ThreeTrader | 信託の明示あり(公式FAQ「Tier 1銀行の顧客信託口座に顧客資金を保管」「顧客資産の分別管理を徹底」) | あり/紛争解決機関の基金。金融委員会の補償基金(破綻時の顧客全体は対象外) | バヌアツVFSC 40430(ThreeTrader Global Limited)/モーリシャスFSC GB24203958(ThreeTrader Global (MU) Pty Ltd) | 公式トップページ(会社概要セクション) |
![]() AXIORY | 信託の明示あり(英語FAQ「customer funds are managed separately from our company's funds at a trustee bank」「transferred to a trust account」)+分別管理+第三者監査 | あり/紛争解決機関の基金。金融委員会Category A会員(公式は「up to 20,000 USD」と表記) | ベリーズFSC 000122/29(Axiory Global)/モーリシャスFSC GB21026376(Tradit Ltd) | 公式FAQ「About Axiory」 |
![]() BigBoss | 分別管理の明示あり(公式ガイドライン「お客様の運用資金と同額の資金を分別保管します」)。ただし利用規約には分別管理の条項がなく、逆に顧客資金を担保として保持する旨を定めている | 確認できず | コモロ BFX2024045 | 公式「ガイドライン」+利用規約 |
![]() Exness | 日本からは確認できず(ログインを要求される) | 確認できず | セーシェルFSA SD025 | 公式サイトがログインを要求し内容が表示されない |
| GEMFOREX (Gemtrade LLC) | ― 破産手続中 | ― | セントビンセント・グレナディーンに登記(FX業務を監督する規制当局の登録は確認できず) | 公式「Bankruptcy Notice」 |
※旧版では8社を「信託保全」「分別管理」の2区分だけで掲載していましたが、補償の原資・規制法人・確認日を欠いていたため、今回は項目を分けて作り直しました。またGEMFOREXは破産手続中であることが公式に告知されているため、資金管理の比較対象からは外しています。各社の記載は上記の出典URLから確認できます。
「信託」という言葉を使っていたのは3社
公式サイトで「信託」という言葉を使って資金の預け先を説明していたのは、Tradeview・AXIORY・ThreeTraderの3社でした。
Tradeviewは金融規制法に基づきお客様の口座資金を銀行に信託、自社資本と完全区分し、独立した会計機関であるGC PARTNERSにより分別管理がされております。
出典:Tradeview 公式「会社概要」(2026年9月24日確認)
AXIORYは英語版のFAQで信託に触れています。
Regardless of the type of account, customer funds are managed separately from our company's funds at a trustee bank. Funds received from customers via credit card payment agencies or other collection agencies are first deposited into our corporate account and then transferred to a trust account for safekeeping.
出典:AXIORY 公式FAQ「About Axiory」(2026年9月24日確認)
ThreeTraderも公式の日本語FAQで信託に触れています。
ThreeTraderは安全性と信頼性を重視し、Tier 1銀行の顧客信託口座に顧客資金を保管しています。これにより、顧客資産の分別管理を徹底し、万が一の事態にも資金の安全を保障します。
出典:ThreeTrader 公式FAQ(2026年9月24日確認)
ただし3社とも、預け先の信託銀行名・信託の上限額・受益者の構成は公表していません。国内FXの顧客区分管理信託には内閣府令143条の2で受益者代理人の選任まで求められていますが、海外FXの「信託」にそうした要件があるかどうかは、公表された情報からは確認できません。言葉は同じでも、確認できる中身の量が違います。
なおXMTradingは「万が一債務超過が発生した場合でも、お客様のご資金は保護されます」と説明していますが、その保護の根拠となる信託や保険の仕組みは公表されていません(公式に記載があるのは分別管理と外部監査のみ)。「保護されます」という表現と、その根拠として開示されている情報の量は、必ずしも一致しません。
残りの多くは分別管理です。XMTradingは「お客様の資金は当社口座とは完全に分離して、優良金融機関で管理」、FXGTは「お客様の資金を自社利用や他の投資に使用することは一切なく」、TitanFXは「Titan FXの自己資金とは完全に分離され…信頼できる銀行機関の別の銀行口座に保管されています」と書いています。いずれも会社の外の信託銀行に移すとは書いていません。
公式サイトの説明と、利用規約が食い違っている場合がある
BigBossは公式の「ガイドライン」ページで、こう書いています。
保全について BigBossは、お客様の運用資金と同額の資金を分別保管します。
出典:BigBoss 公式「ガイドライン」(2026年9月24日確認。英語版は「segregated management」)
一方、同社の利用規約(Client Agreement)には分別管理の条項がありません。「CLIENT MONEY」の章にあるのは、次の内容です。
All funds, securities, currencies, and other property of Client which BigBoss or its affiliates may at any time be carrying for the Client … are to be held by BigBoss as security and subject to a general lien and right of set-off for liabilities of Client to BigBoss
BigBoss may in its discretion, at any time and from time to time, without notice to Client, apply and/or transfer any or all funds or other property of Client between any of the Account.
出典:BigBoss 利用規約(Client Agreement)第9条「CLIENT MONEY」9.1(2026年9月24日確認)
顧客の資金を「担保として保持する」「一般先取特権と相殺権の対象とする」、そして「顧客に通知することなく、裁量で口座間を移動できる」という定めです。同じ会社のページと規約で、書かれている内容が違います。
これはBigBossに限った話ではなく、ページの宣伝文と、実際に自分が同意する規約は別の文書だということです。口座開設の前に、規約の「Client Money」「顧客資金」にあたる章を読んでおくと、宣伝文との差が見えます。
Exnessは、日本からアクセスするとログインを求められ、口座を持たないと内容を読めません。当編集部ではロスカット・スワップの調査でも同じ状態を確認しており、口座を開く前に取引条件を比較できない構造になっています。
他社メディアでは、これらの業者についても「信託保全」「分別管理」と断定して掲載されていることがあります。当編集部は公式で確認できたものだけを書き、確認できなかったものは「確認できず」としています。
「補償あり」の中身は4種類ある|同じ言葉でも別物
海外FXの比較記事で「補償上限◯◯万円」と並んでいる数字は、原資がまったく違うものが混ざっています。とくに業者が倒産したときに使えるかどうかは、種類によって答えが分かれます。金額の大小より先に、ここを見てください。

| 種類 | 何のお金か | 本記事で確認した例 | 業者が倒産したとき |
|---|---|---|---|
| ① 法定の補償基金 | 規制当局の制度として業界が積み立てる基金 | FSCS(英国・最大85,000ポンド)/ICF(キプロス・90%かつ最大20,000ユーロ) | 本来はここで効く制度。ただし日本から使う口座は対象になりにくい(後述) |
| ② 賠償責任保険 | 会社が誰かに賠償する責任に備える保険 | HFM(専門家賠償責任保険 USD5,000,000)/FXGT(民事賠償責任保険 EUR1,000,000)/TitanFX(専門家賠償責任 USD500,000+役員賠償責任 USD2,500,000)/XS.com(ロイズの民事賠償責任保険プログラムと明記) | 顧客の預けたお金を返すための保険ではない。ただしXS.comは「破産時」の損害もカバー対象と自称している |
| ③ 顧客の損害を対象と明記した保険 | 会社が任意で加入する、顧客の損害向けの保険 | XS.com(1万USドル超の損害・破産時に最大500万USドル)/Vantage(Excess of Loss・1請求者最大USD1,000,000・総額USD50,000,000) | 条件つきで効く場合がある。免責額・適格条件・約款の除外事項を要確認 |
| ④ 紛争解決機関の基金 | 業者間の民間組織が会費から積み立てる基金 | 金融委員会(The Financial Commission・1顧客あたり最大20,000ユーロ)。TitanFX・ThreeTrader・AXIORY・Vantageが加入 | 規約で「業者が破綻した場合の顧客全体」を対象外にしている |
②賠償責任保険は「顧客のお金を返す保険」ではない
もっとも誤解されやすいのがここです。賠償責任保険は、会社が業務上のミスなどで誰かに損害を与えたときに、その賠償金を保険で払うための契約です。会社が倒産して預かり金が返せない、という場面に備えたものではありません。
TitanFXの公式ページは、保険の中身をこう説明しています。
専門家賠償責任保険 (Professional Indemnity Insurance) は、専門的な過失、不作為、または過失に起因する請求に対する保護を提供します。各請求および合計の限度額は500,000米ドルであり…
役員賠償責任保険 (Directors & Officers Liability Insurance) は、不正行為の疑いによる個人的責任からTitan FXの役員を保護するもので、各請求および合計で最高2,500,000米ドルの保護を提供します。
出典:TitanFX 公式「規制」(2026年9月24日確認)
前者は「専門的な過失、不作為、または過失に起因する請求」に対する保護、後者は「Titan FXの役員を保護する」保険です。役員賠償責任保険にいたっては、守る対象が顧客ですらありません。金額が大きいので安心材料に見えますが、性質が違います。
③顧客向けの追加保険には、免責額と適格条件がある
こちらは顧客の損害を対象にしていると明記された保険です。ただし「いくらから」「誰が対象か」という条件が付きます。なおXS.comは同じページで「ロイズの民事賠償責任保険プログラムに加入」とも書いており、②と③の境界は各社の表記だけでは判別しきれません。証書まで公開していたのは今回の14社ではHFM・FXGT・Vantageの3社です。
XSは、1万USドルを超える損害や破産時に500万USドル までの損害をカバーする追加保険をご用意しています。
出典:XS.com 公式「安全性」(2026年9月18日確認)
「1万USドルを超える損害」と書かれています。それを下回る損害は対象にならないという読み方になり、少額の残高しか置いていない人には届かない設計です。
Vantageも同じ型です。公式はExcess of Loss insurance(超過損害額をカバーする保険)と明記し、eligible clients(適格な顧客)に限ると書いています。
Eligible clients may benefit from an additional layer of protection through Excess of Loss insurance, providing coverage of up to USD1 million in respect of the Net Loss of any one eligible Claimant, subject to a maximum aggregate coverage of USD50 million and the applicable policy terms, conditions, exclusions, and limits.
出典:Vantage 公式「Fund Insurance」(2026年9月24日確認)
末尾に「applicable policy terms, conditions, exclusions, and limits」(適用される約款の条件・除外事項・限度額に従う)とあります。そして同じページの脚注に、肝心の条件が書かれています。
Excess of Loss insurance applies only in the event of an Insolvency Event during the applicable Policy Period for customers who satisfy the requirements for Claimants under the Policy. A minimum retention of USD20,000 applies per Claimant. Trading losses are not covered.
Claimants are beneficiaries under the Policy but do not have a direct right to bring a claim against the insurer.
出典:Vantage 公式「Fund Insurance」の脚注(2026年9月24日確認)。引受は ARCH 2012 at Lloyd's of London
重要なのは「A minimum retention of USD20,000 applies per Claimant」=1請求者あたり2万USドルの自己負担額です。2万USドルに届かない損害では、この保険は機能しません。さらに適用されるのは破綻(Insolvency Event)が起きた場合に限られ、取引による損失は対象外、そして請求者は保険の受益者ではあっても保険会社に直接請求する権利はないと明記されています。
※他社の比較記事では「Vantage|最大20,000ユーロの補償」と紹介されていることがありますが、公式サイトの表示は1請求者あたり最大USD1,000,000・総額USD50,000,000です(2026年9月24日確認)。金額を引用する際は、出典と確認日をあわせてご確認ください。
保険証書には何が書いてあるか|HFMとFXGTの実例
今回の14社のうち、保険証書そのものを公開していたのはHFM・FXGT・Vantageの3社でした。実際に証書を読むと、宣伝文句では分からない条件が書かれています。公式が原本を公開しているので、誰でも同じ確認ができます。
日本語ページの表記は「500万ユーロ」
500万ユーロの業界トップクラスの保険 当社は、詐欺、エラー、その他のリスクからお客様に対する当社の責任をさらに強化するための保険プログラムを保持しています。
出典:HFM 公式「資金の安全性」(2026年9月24日確認)
この文自体が「お客様に対する当社の責任をさらに強化するための保険」と書いています。顧客の資産を保全する保険ではなく、会社の責任に備える保険だと公式が説明しているわけです。
証書の原文は「USD 5,000,000」だった
同じページから開ける保険証書PDFの本文です。
Insured: HF MARKETS (SV) LTD (Saint Vincent and the Grenadines)
Professional Indemnity Insurance
Limit of Liability: USD 5,000,000 Any One Claim and in the aggregate including defence costs and expenses
出典:HFM 公式掲示の保険証書 Certificate of Insurance(発行 Marsh Insurance Brokers Limited・2026年9月24日確認)
| 項目 | 日本語ページ | 保険証書の原文 |
|---|---|---|
| 通貨と金額 | 500万ユーロ | USD 5,000,000(500万米ドル) |
| 保険の種類 | 「保険プログラム」 | Professional Indemnity Insurance(専門家賠償責任保険) |
| 金額の範囲 | 記載なし | including defence costs and expenses(弁護費用を含む)/in the aggregate(総額) |
| 被保険者 | 記載なし | HF MARKETS (SV) LTD(セントビンセント・グレナディーン法人) |
「弁護費用を含む総額」の意味
証書のincluding defence costs and expensesは、訴訟にかかった弁護士費用も同じ500万米ドルの枠から支払われるという意味です。in the aggregateは、1件ごとではなく保険期間を通じた合計の上限という意味になります。
つまり争いが長引いて費用がかさむほど、賠償に回る金額は減ります。「500万ユーロが全額そのまま顧客に配られる」という読み方は成り立ちません。
また被保険者はHF MARKETS (SV) LTD、セントビンセント・グレナディーンの法人です。自分が口座を開いた法人がどれなのかによって、この証書が関係するかどうかが変わります。口座開設時の契約書に記載された法人名を確認してください。
FXGTの証書も同じ構造だった
FXGTも公式サイトに保険証明書を掲示しています。日本語ページの説明はこうです。
賠償責任保険 当社は、業務上の過失等に起因する一定の損失に備え、賠償責任保険に加入しています。本保険は、過失・不作為・その他の業務上リスクに起因する経済的損失に対する補償を含みます。(補償内容および適用条件には制限があります。)
出典:FXGT 公式「資金の安全性」(2026年9月24日確認)
「業務上の過失等に起因する」と明記されています。公開されている証明書には、次の内容が記載されていました。
| 項目 | HFM | FXGT |
|---|---|---|
| 保険の種類 | Professional Indemnity Insurance (専門家賠償責任保険) | Civil Liability Insurance Policy for Forex Brokers (FXブローカー向け民事賠償責任保険) |
| 限度額 | USD 5,000,000 | EUR 1,000,000 |
| 範囲 | Any One Claim and in the aggregate including defence costs and expenses | in the aggregate costs and expenses inclusive |
| 枠の共有 | insured as part of a group policy | The cover of this insurance is shared with other affiliated entities. |
| 引受 | 100% Lloyd's | Certain underwriters at Lloyd's |
| 被保険者 | HF MARKETS (SV) LTD | GT Global Ltd |
FXGTの証明書には、さらに次の注意書きがあります。
This evidence of insurance is provided for information purposes only and confers no rights upon any person in possession of it.
The cover of this insurance is shared with other affiliated entities.
出典:FXGT 公式掲示の 保険証明書(Confirmation of Cover)(発行 Renaissance Insurance Brokers Ltd・2026年9月24日確認)
「この保険証明書は情報提供のみを目的とし、所持する人に何の権利も与えない」と書かれています。保険証書を見た顧客が、その保険に対して直接請求できるわけではないということです。そして補償枠は関連会社と共有されます。
Vantageも証書を公開していますが、当編集部ではファイルの中身を確認できませんでした(日本からの取得が制限されています)。公式ページには「適用される約款の条件・除外事項・限度額に従う」と書かれています。
※この指摘はHFMの信頼性を否定するものではありません。保険証書を自社サイトで公開していること自体は、開示姿勢として評価できます(14社のうち証書を公開していたのはHFM・FXGT・Vantageの3社でした)。本記事が問題にしているのは、「500万ユーロの補償がある=倒産しても500万ユーロまで返ってくる」と読める紹介のされ方です。
金融委員会の補償基金は「破綻」を対象外にしている
金融委員会(The Financial Commission)の補償基金は、業者が破綻して顧客全体が被害を受ける場面には適用されないと規約に明記されています。TitanFX・ThreeTrader・AXIORY・Vantageが加入しており、日本語の比較記事では「補償基金あり」と紹介されることが多い制度です。
政府の制度ではなく、業者が作った民間の組織
金融委員会は、FXやCFDのブローカーとトレーダーの紛争を解決する独立した第三者機関です。規制当局ではなく、運営しているのはFINACOM PLC LTDという民間の組織です。TitanFXの公式ページも「紛争規制を専門とする独立した組織」と説明しています。
補償基金の原資は、加盟している業者が払う月会費の10%です。規約にはこの資金は別の銀行口座で保管され、組織の運営費には使えないとも書かれています。公的な保険料や税金ではなく、加盟業者が出し合ったお金ということになります。
規約の除外事項に「破綻」が入っている
補償基金がカバーしない範囲として、規約は次を挙げています(除外の根拠は規約 clause 16 と明記されています)。
- 自己判断でおこなった取引で生じた損失(traders' possible losses incurred while engaging in self-directed trading)
- ブローカーが破綻した場合の、その業者の顧客全体(does not apply to a broker member’s entire client base should the broker become insolvent)
- 運用口座の取引、合成商品・非市場性商品・デジタル通貨市場の取引
2つ目がまさに「業者の破綻」です。規約の原文は「does not apply to a broker member’s entire client base should the broker become insolvent」=業者が破綻した場合に、その業者の顧客全体に対しては適用されないと書かれています。信託保全が備えているのはこの場面ですから、金融委員会の補償基金は信託保全の代わりにはなりません。
使えるのは「裁定に業者が従わなかったとき」
では、どういうときに支払われるのか。TitanFXの公式ページが手順を書いています。
特別な補償基金 Titan FXに対する苦情1件につき最大€20,000を補償
ステップ2 事例から45日以内に、金融委員会のホームページ申し立てを行う。(無料)
ステップ5 お客様に有利な裁決結果となり、万が一Titan FXがこれに従うことを拒否した場合、お客様に補償金が支払われる。
出典:TitanFX 公式「規制」(2026年9月24日確認)
「苦情を申し立てる」→「裁定が出る」→「業者が従わない」という流れが前提です。規約も「委員会が出した裁定に対してのみ使われる」と書いています。会社がすでに存在しない破綻の場面とは、想定している状況が違います。
さらに規約には、請求が重なって原資が足りない場合は、残高を請求者で均等に分けるとも書かれています。20,000ユーロは1顧客あたり(per client)の上限であって、必ずその額が出るという意味ではありません。支払われるのは会員のステータス変更(除名など)に関する委員会の決定から90日以内とされています。申し立てには事例から45日以内という期限もあります。
※金融委員会の補償基金は、出金トラブルや約定に関する紛争では実際に機能しうる制度です。本記事が指摘しているのは「倒産への備えとして紹介するのは適切ではない」という点だけです。出金をめぐるトラブルの相談先は海外FXの出金拒否で整理しています。
FSCS・ICFは日本人の口座に適用されるのか
英国のFSCSもキプロスのICFも、日本から使う海外FX口座では基本的に対象になりません。理由は補償額ではなく、日本居住者が契約する法人が、多くの場合FCAやCySECの規制下にないからです。グループ全体ではCySECやASICの認可を持つ業者もあるため、「どの法人と契約するか」で結論が変わります。
FSCSは「FCAの認可を受けていること」が条件
FSCS(金融サービス補償機構)の投資分野の上限は1人・1社あたり85,000ポンドです(2019年4月1日以降に破綻した会社の場合)。ただし公式サイトは、補償の前提をこう書いています。
the PRA or the FCA must have authorised the provider or adviser, as well as regulated the service and product
出典:FSCS 公式「What we cover: Investments」(2026年9月18日確認)
英国の当局(PRAまたはFCA)が、その業者とサービスを認可・規制していることが条件です。認可を受けていない会社の顧客は対象外になります。
ICFは「90%と20,000ユーロのいずれか低いほう」
キプロスのICF(投資者補償基金)は、金額の決め方が少し複雑です。
the lower of 90% of the cumulative covered claims of the covered client and €20.000
出典:CySEC 公式「Investor Compensation Fund」(2026年9月18日確認)
「対象となる請求額の90%」と「20,000ユーロ」を比べて、低いほうが支払われます。全額ではなく90%が上限である点と、プロ投資家・大企業・金融機関・政府機関は対象から除かれる点が見落とされがちです。
日本から契約するのは、どの法人か
ここが本題です。同じブランドでも地域ごとに別法人が運営しています。グループ全体ではCySECやASICの認可を持つ業者もありますが、日本居住者が実際に契約するのはオフショアの法人であることがほとんどです。公式サイトのフッターや規制ページに書かれています。
| 業者 | 公式に記載された法人と規制 | FSCS/ICFの対象か |
|---|---|---|
| XMTrading | Tradexfin Limited/セーシェルFSA(SD010) Fintrade Limited/モーリシャスFSC(GB20025835) | 対象外(FCA・CySECの規制ではない) |
| Exness | Exness (SC) Ltd/セーシェルFSA(SD025) | 対象外 |
| FXGT | GT Global Ltd/セーシェルSFSA(SD019)ほか、南アフリカFSCA(48896)・バヌアツVFSC(700601) | 対象外 |
| TitanFX | モーリシャスFSC | 対象外 |
| ThreeTrader | ThreeTrader Global Limited/バヌアツVFSC(40430) | 対象外 |
| Tradeview | Tradeview LTD/ケイマン諸島CIMA(#585163) | 対象外 |
| HFM(保険証書上) | HF MARKETS (SV) LTD/セントビンセント・グレナディーン | 対象外 |
| AXIORY | Axiory Global/ベリーズFSC(000122/29) Tradit Ltd/モーリシャスFSC(GB21026376) | 対象外 |
| XS.com | グループにCySEC(412/22)・ASIC(374409)法人あり。セーシェルFSA(SD089)ほか多数 | 契約する事業体による(公式が「補償制度の条項は事業体によって異なる」と明記) |
この点は業者自身も認めています。XS.comは「投資家補償制度に関する規制条項は、お客様が関与するXS事業体によって異なります」と明記し、Vantageも「保護の内容は口座を保有する事業体と適用される顧客契約によって変わる」と書いています。
つまり「FCAライセンスを持っているから安心」という説明は、その法人と契約している人にしか当てはまりません。口座開設の前に、規約に書かれている契約先の法人名を確認してください。
※旧版ではFCAを「最大approx. $81,250/人が保証」、CySECを「上限額approx. $16,875/人程度」と記載していましたが、FSCSの上限は85,000ポンド、ICFは90%かつ20,000ユーロです。円換算の固定表記は為替で変わるため、今回から公式が示す通貨のまま記載しています。あわせて「ライセンスがあれば政府が資産を保証する」という旧版の記述も削除しました。オフショアのライセンスには、FSCSやICFにあたる補償基金がありません。
実際に破綻した業者はどうなったか|GEMFOREXの記録
海外FX業者の破綻は、実際に起きています。しかもサービス停止から2年半以上が経っても、まだ清算手続の途中でした。制度の説明だけでは見えない「その後」を、公式の告知から確認します。
公式サイトは現在「破産通知」になっている
GEMFOREXは日本人利用者の多かった業者です。現在旧ドメインにアクセスすると別ドメインに転送され、表示されるのは破産手続の告知1ページだけになっています。
Bankruptcy Proceedings Announcement
We hereby give notice that, as a consequence of the cessation of our services effective May 31, 2023, we were rendered insolvent and are presently subject to bankruptcy proceedings. Said proceedings are being conducted in accordance with the laws of St. Vincent and the Grenadines, pursuant to Section 66 of Chapter 151 of the Limited Liability Companies Act.
As such proceedings are already in progress, we are unable to correspond individually with creditors at this time. Upon completion of the assessment and compilation of our assets, including outstanding accounts receivable, the appointed liquidator shall communicate with creditors by electronic mail.
出典:Gemtrade LLC 公式「Bankruptcy Notice」(告知の日付は2026年2月15日・2026年9月24日確認)
要点は3つです。
- 2023年5月31日にサービスを停止し、支払不能になった(rendered insolvent)
- 手続きはセントビンセント・グレナディーンの法律(有限責任会社法151章66条)に従って進んでいる
- 手続き中のため債権者へ個別に連絡できず、資産の評価と集約が終わったら清算人からメールで連絡する
この告知の日付は2026年2月15日です。サービス停止から2年半以上が経った時点で、まだ「清算人から連絡する」という段階にあることが分かります。
「分別管理」と書いてあっても、この結果になりうる
ここが本記事でいちばんお伝えしたい点です。破綻した業者も、営業していたあいだは資金管理をしている前提で紹介されていました。当サイトの旧版の記事も、GEMFOREXを「分別管理」の業者として表に掲載していました。
信託保全とはで見たとおり、分別管理は会社の中でお金を分けている状態です。会社が破産手続に入れば、顧客のお金も破産手続の中で扱われます。信託のように会社の外に出ていれば、この手続きの影響を受けにくくなります。両者の差が出るのが、まさにこの場面です。
そしてもうひとつ。お金が戻るかどうかと同じくらい、「いつ戻るか」が重要です。破産手続は資産の調査・集約・債権者の確定を経て進みます。数か月で解決する話ではありません。
※当サイトの旧版の記事では、GEMFOREXを資金管理方法の比較表に掲載していました。同社は破産手続中であることが公式に告知されているため、今回の改訂で比較対象から外し、破綻事例として扱いをあらためました。過去の記載でご不便をおかけした点をお詫びいたします。
業者の安全性を多面的に比べたい場合は、海外FXの安全性ランキングで規制・運営歴を含めて採点しています。
信託保全がない業者を選ぶときに見るもの
「信託」を明示している業者は14社中3社で、その3社も受託先の銀行名や上限額を公表していません。現実には「信託保全を当てにできない業者から選ぶ」ことになります。そのときに確認できることを、確認しやすい順に挙げます。
①公式サイトに資金管理の説明ページがあるか
もっとも単純で、差がはっきり出る項目です。専用ページを設けて説明している業者と、どこにも書いていない業者があります。
今回の14社では、HFM・FXGT・XS.com・MiltonMarkets・MyfxMarkets・Vantage・Tradeview・XMTradingは「資金の安全性」などの専用ページで説明していました。一方でTitanFXは「規制」ページの中、AXIORYは英語版のFAQの中にあり、探さないと見つかりません。BigBossは「ガイドライン」という利用上の注意ページの中にありました。書いてある場所が分かりにくいこと自体は管理していない証拠にはなりませんが、利用者が事前に確認できる場所に情報があるかどうかは判断材料になります。
②「補償」の原資が何か
4種類の分類で見たとおりです。金額の大きさではなく種類を見てください。確認のしかたは次のとおりです。
| 見るポイント | 確認のしかた |
|---|---|
| 保険なのか基金なのか | 「insurance」「compensation fund」のどちらで書かれているか |
| 保険なら何の保険か | Professional Indemnity(専門家賠償責任)なら会社の賠償責任向け。顧客の損害向けなら対象と免責額が書かれている |
| 下限・免責額 | 「◯◯を超える損害」という条件があるか |
| 対象者の限定 | 「eligible clients」「適格な顧客」などの限定語があるか |
| 除外事項 | 破綻・倒産(insolvency)が除外されていないか |
③契約する法人と、その所在地
ブランド名ではなく、規約に書かれた法人名を見てください。公式サイトのフッターに「◯◯ Limited は△△の規制を受けています」と併記されていることが多く、日本から開設する口座がどの法人のものかはそこで判断できます。
所在地が変われば、破綻したときに適用される法律も変わります。GEMFOREXの破産手続がセントビンセント・グレナディーンの法律で進んでいるのは、そこに登記された法人だったからです。
④口座に置いておく金額を分散する
制度で守られない前提に立つなら、そもそも預けっぱなしにする金額を減らすのが現実的です。
- 取引に必要な証拠金だけを入れ、利益はこまめに出金する
- 出金の実績(着金までの日数)を少額で試してから、金額を上げる
- 1社に集中させず、複数社に分ける
出金してしまえば、その資金は業者の破綻とは無関係になります。信託保全の有無を気にするより効果が大きい場面もあります。出金の可否や遅延については海外FXの出金拒否で、原因別に整理しています。
⑤運営歴だけで判断しない
「運営歴が長い=安全」という説明をよく見ますが、GEMFOREXは2010年代から日本で広く使われていた業者でした。運営歴は参考情報のひとつで、それ単独で安全性を保証するものではありません。
逆に運営歴が短いことだけを理由に避ける必要もありません。公開されている情報の量と具体性のほうが、確認できる材料としては有用です。
よくある質問
信託保全とは何ですか?
顧客から預かったお金を、FX会社の外にある信託銀行に預けて管理する仕組みです。預けられたお金は信託財産になるため、FX会社が倒産しても会社の債権者が差し押さえることはできません。ただし取引で出た損失を補填する制度ではありません。守られるのは、その時点で口座に残っている金額です。
分別管理とは何ですか?読み方は?
「ぶんべつかんり」と読みます。FX会社が自社の資金と顧客の資金を分けて管理することです。信託保全との違いは、お金が会社の外に出ているかどうかです。分別管理は会社が自分で分けて持っているため、会社が破産手続に入れば、その手続きの中で扱われます。区分管理とは、法令上で使われる言い方で、内容は分別管理とほぼ同じ意味です(金融商品取引法は「自己の固有財産と区分して管理」と表現します)。英語では segregated accounts / segregation of client funds と表記されます。
顧客区分管理信託と顧客分別金信託の違いは?
対象になる取引が違います。金融商品取引業等に関する内閣府令で、顧客区分管理信託は143条の2に定められ、通貨関連デリバティブ取引等(=店頭FX)と暗号資産等関連デリバティブ取引等が対象です。顧客分別金信託は141条(法43条の2第2項)で、有価証券関連の取引が対象になります。FXの口座で関係するのは顧客区分管理信託のほうです。なお商品関連市場デリバティブ取引には、142条の5の商品顧客区分管理信託があります。
海外FXで信託保全がある業者はどこですか?
14社を調べて、「信託」という言葉で説明していたのはTradeview・AXIORY・ThreeTraderの3社でした(2026年9月確認)。Tradeviewは日本語ページに「Tradeviewは金融規制法に基づきお客様の口座資金を銀行に信託、自社資本と完全区分し、独立した会計機関であるGC PARTNERSにより分別管理がされております」と記載されています。他社の多くは分別管理で、AXIORYは英語版のFAQで「customer funds are managed separately from our company's funds at a trustee bank」と説明しており、信託に触れている2社目です。ただし両社とも受託先の銀行名・上限額・受益者の構成は公表していません。BigBossは公式ガイドラインに「お客様の運用資金と同額の資金を分別保管します」とありますが、利用規約には分別管理の条項がなく、逆に顧客資金を担保として保持する旨が定められています。
信託保全で補填される金額はどれくらいですか?
業者によって異なり、上限のない業者と上限がある業者があります。また「補償」と書かれていても原資が4種類あり、倒産時に機能しないものが含まれます。法定の補償基金ではFSCS(英国)が1人・1社あたり85,000ポンド、ICF(キプロス)が対象請求額の90%と20,000ユーロのいずれか低いほうです。ただしこれらは日本居住者が契約するオフショア法人には基本的に適用されません。民間の保険では、XS.comが1万USドルを超える損害に対し最大500万USドル、Vantageが1請求者あたり最大USD1,000,000(総額USD50,000,000)と公表しています。ただしVantageは1請求者あたり2万USドルの自己負担額があり、適用されるのは破綻時に限られ、取引損失は対象外です。
なぜ海外FXでは信託保全が義務化されていないのですか?
日本の金融商品取引法が適用されるのは、日本の金融庁に登録した業者だけだからです。国内FXでは金融商品取引法43条の3第1項が区分管理を義務づけ、その信託の要件が内閣府令143条の2に定められています。海外FX業者はこの登録をしていないため、対象外になります。各社が拠点を置く国の規制に従うことになり、信託保全を求めない規制当局のもとでは任意です。信託には信託報酬などの継続的なコストもかかるため、分別管理を選ぶ業者が多いのが実態です。
海外FX業者が倒産したら、預けたお金はどうなりますか?
その国の破産手続の中で扱われ、時間がかかります。実例としてGEMFOREX(Gemtrade LLC)は、2023年5月31日のサービス停止により支払不能となり、セントビンセント・グレナディーンの法律に基づく破産手続に入ったと公式に告知しています。2026年2月15日付の告知の時点でも「資産の評価と集約が終わったら清算人からメールで連絡する」という段階でした。つまり戻るかどうかだけでなく、いつ戻るかも不確実です。取引に必要な資金だけを口座に置き、利益はこまめに出金しておくことが現実的な対策になります。
「補償基金に加入しているから安心」と書かれていますが本当ですか?
その基金が何を対象にしているかによります。たとえば金融委員会(The Financial Commission)の補償基金は、1顧客あたり最大20,000ユーロですが、規約で「ブローカーの顧客全体に影響する破綻」を対象外としています。支払われるのは苦情を申し立てて裁定が出たのに業者が従わなかった場合で、倒産時に使える制度ではありません。原資も加盟業者が払う月会費の10%で、請求が重なって足りない場合は請求者で均等に分けると規約に書かれています。申し立てには事例から45日以内という期限もあります。
日本国内の居住者が利用できるFX業者の安全性をどう評価すればよいですか?
「制度で守られているか」と「自分が契約する相手は誰か」の2点で切り分けてください。日本の金融庁に登録している国内FXであれば、金融商品取引法43条の3第1項と内閣府令143条の2により信託による区分管理が義務づけられ、破綻時の返還手続きまで制度化されています。一方、海外FX業者は日本の登録がないためこの義務の対象外で、各社が拠点を置く国の規制に従います。海外FXを使う場合は、①公式サイトに資金管理の説明ページがあるか ②「補償」の原資が法定の基金か保険か紛争解決機関の基金か ③自分が契約する法人名と所在地、の3点を口座開設前に確認してください。加えて、口座に置く金額を必要分に絞り、利益はこまめに出金しておくことが実務的な対策になります。
まとめ|金額ではなく「原資」と「契約している法人」を見る
14社を調べて分かったのは、信託保全の有無だけでは判断できないということでした。「信託」という言葉で説明していたのは3社で、多くは分別管理です。そして「補償あり」と書かれた制度の半分は、業者が倒産したときには機能しません。
見るべきなのは金額の大きさではなく、その補償の原資が何かと、自分が契約している法人がどこにあるかです。賠償責任保険は会社の責任に備えるもので、紛争解決機関の基金は破綻を対象外にしています。FSCSやICFのような法定の補償基金は、日本から開設するオフショア法人の口座には基本的に適用されません。
そのうえで実務的にいちばん効くのは、口座に置いておく金額を減らすことです。GEMFOREXの例が示すとおり、破綻した場合は戻るかどうかだけでなく、いつ戻るかも不確実になります。出金してしまえば、その資金は業者の状況と切り離せます。
資金管理の方法とあわせて、規制・運営歴・出金実績まで含めて比べたい場合は海外FXの安全性ランキングを、国内FXとの制度の違いは海外FXと国内FXの違いをご覧ください。
最後に、口座に置く金額を減らすなら、1回あたりの取引コストを下げておくほど手元に残る資金は増えます。キャッシュバックを使えば取引のたびにスプレッドの一部が戻るため、実質的なコストを下げられます。ただし対象になるのは指定のリンクから開設した口座だけで、すでに持っている口座を後から登録することはできません。
取引コストを下げて手元に残る資金を増やす、キャッシュバック対象の開設手順を確認












